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「俺は君と出会って自分の人生を知った。それは偶然なのか必然なのかはよく分からないが、俺はそんなのどうでもいい!君がいるから僕がいる。僕がいるから――――」
身体全体を使って演説している松浦の背中を見ながらしゃがみ、俺は鞄の取っ手に手をかける。
松浦はそれでも俺の行動に気付かず、一人だけの世界に入っていた。
そこまでは求めていないのだが、まぁいいだろう。
「・・・そろそろ行くか」
目的を果たせた俺はこんな馬鹿を置いて一人、明星学院に向かって歩いていった。
『ねぇ、あの人何一人で喋ってんだろ?』
『何か運命とか、出会いとか連呼してるよ』
『駄目だって。ああいう人って話しかけたら終わりよ』
俺が学校に向かう途中、周りでは松浦の事を恐れるような目で噂していた。
★
「ひどくないっすかっ!?」
今いるのは校門前。俺はレンガで出来ている柱に寄り掛かっていた。
そして眼前には目に涙を溜めてわなわなと手を震わせている松浦の姿。
流石にやり過ぎたかなとは思っていたのだが、いやはや、泣きつかれるとは思わなかった。
「何がだ?そんな泣きそうな顔でそう叫ばれると、まるで俺が虐めてるみたいじゃないか?」
「みたいじゃない事実だろ!?おかげで俺は一人妄想に走る危険人物にされちまったじゃねぇか!どうしてくれるんだよ、残り三年間の高校生活ぅ!?」
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