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「で、朝っぱらから何の用だ?」
「久羽とめくるめく愛の――」
「うるさい黙れ殺すぞ貴様」
「じ、冗談だって。いや、遊びに行かねーかと思ってさ」
「ふむ…まあ、遊びに行くのは構わんが」
世間一般では春休み。私たちも例に漏れず休暇を満喫している。
…といっても、ごろごろしているだけだが。
「駅前のゲーセン行こうぜ。なんかアーケードに新作出てるらしいし」
「また長時間付き合わされるのは勘弁してくれ…」
「大丈夫だって、ちょい顔出すだけだから」
その言葉に何度騙されたことか。
まあ、別に嫌ではないのだが。
「とりあえず着替える。暫し待っていてくれ」
「了解。んじゃ下で待っとくわ」
そう言って部屋を後にする武。
こういう時事情を知っている仲は楽でいい。
クローゼットから黒のジーンズとTシャツを取り出し鏡台の前に立つ。
鏡に映るのはまるで女のような自分の姿。
腰まである長い髪――母が英国の出身な私は俗に言うハーフというやつで、髪の毛は母親譲りの銀髪なのだ――に東洋系の顔立ちとは異なる欧米系のそれ。
よく母に銀髪に翡翠色の瞳なんてまるで物語のお姫様ね、なんてからかわれたものだ。
そんな、幼い頃の思い出をふと思い出しながら、紺色のパジャマを脱ぐ。
さらけ出た己の肌はありえないほど白い。
そして何よりも――その胸部。
男性にはありえない二つの膨らみがそこにあった
。
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