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東名市。
海に面したこの街は三つの大きな学園が集中する学園都市である。
私や武の住む場所から電車で揺られて15分ほどの学園都市駅前は、学生など若い人達で賑わい、それは春休みでも同じである。
「ゲーセンゲーセン♪」
「頼むからあまり子供みたいにはしゃがないでくれ……」
「わりぃわりぃ。ゲーマーの血が騒いでよ」
「絶対居座る気だろお前……」
そんなやり取りをしながらゲームセンターに入っていく。
冷房が効いているせいで薄着の私としては少し肌寒いが、まあすぐに慣れるだろう。
中はやはり込み合い、特に新しく出たと思われる新台のところには結構な数の人だかりが。
「やはり混んでいるな……」
「そうだな……それよりどうする久羽?俺は並ぶけどその間暇だろ?」
「そうだな……少し中を見て回ろうかと思う」
「オッケ、んじゃちょっと行ってくる」
「見つからなかったらメールでもしてくれ」
はいよ、と武は人だかりの方へと向かっていく。
あの分では一時間ほど待ちそうだな……。
「とりあえず適当に見て回るか……」
手近なところから見て回ろうとUFOキャッチャーのある場所に足をのばす。
「ふむ、侍ネコの新シリーズか」
UFOキャッチャーのある場所に行くと、ネコが侍の格好で剣を構える侍ネコシリーズの新作が置いてあった。
「……やってみるか」
とりあえず100円を投入。
アームがゆっくりと動き、標的(トラ柄)を掴む。
「…あ、取れた」
ポンッと音を立てて取り出し口に落ちる侍ネコ。
以外と簡単に取れたことに少し驚いた。
「ゲーセンというのはいい所だなっ」
気をよくした私は続けて100円を投入。
これでまた家のお友達――部屋に飾ってあるぬいぐるみ達――が増えるかと思うと頬が緩んでくる。
「いかんいかん……集中せねば」
――結局。
2000円ほどつぎ込み両手いっぱいの侍ネコ達を抱えて持って帰る羽目になった。
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