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「なあ?」
風が少し冷たくなって、ほほをなでていく。
「なんでオレって生きてんのかな。」
あまりの質問に、しばし思考停止を強いられる。
何か、あったか…?
ふわふわした栗色の髪を風に遊ばせながら、前を歩く少年の表情は見えない。
「……心臓が動いてるからだろ。」
足が止まった。
「あー。」
くるりと振り返り、ふにゃらと笑い。
「そっかー。
すげーな、オレの心臓。」
「…。」
コイツが大きな悩みを抱えて生きる意味を問うことなど、世界が終わったってありはしないのだ。
ほっとしたような、複雑な気分でため息をつく。
「みんなすげー心臓もって生きてんだなぁ。」
「…。」
何をわかってるんだか、わかってないんだか。
なんだかうれしそうな少年を見て、少し微笑う。
暑さもやわらいだ、ほんのり橙の空の下。草花がそっと、揺れていた。
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