“どんきち”

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『愛梨っ!!』 カラスの目に移ったのは、想い人の愛梨。 カァ、カァ! カラスは鳴き声をあげ、自分の存在を愛梨にアピールした。 その鳴き声に気づいた愛梨はカラスの方に顔を向け、 「どんきちっ!!」 と、叫び、カラスに駆け寄った。 カラスはまた虐げられたいという欲望が、まだ頭の片隅に残っており逃げるのをやめた。 近づいてきた愛梨をよく見ると、頭に落としてしまった糞は綺麗に洗われ、右手には短めの木の棒をもっていた。 その刹那…。 「ガァッ、カァ!」 持っていた木の棒で体をつっつかれた。 やはり、つつかれた箇所は痛みを感じると共に快感も感じてしまう。 「どんきちぃ、よくもウチの頭に、う○こ落としてくれたなコンチクショウ!」 『…どんきちってなんだ?』 快感に溺れながらも必死に理性を保って、カラスは疑問を抱いた。 どんきちって何? と今すぐに訊きたかった。 けどカラスは人間の言葉を話せない。だからこの気持ちは伝わらない。 カラスはどこか悲しいという感情に陥った。 なんで俺様はカラスに生まれてきたのだろう。 なんで愛梨は人間に生まれてしまったのだろう。 あぁ、そういえば…おばあちゃんが言ってた気がする。 ー…世の中、そう簡単にうまくいかないんだよ。だけどね、神様はそういう試練は、乗り越えられるカラスにしか与えないんだよ…ー ばあちゃん、俺様は乗り越えられるのかな…。
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