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梅雨の明けた、ある鮮やかな初夏の日に生まれたから『美夏(ミカ)』
そんな安易な名前を付けられたわたしは、ごくごく平凡な家庭の一人っ子として育てられ、特別個性があるわけでもなければ特徴的なわけでもなく。適度に流行りを追いながら周りから浮かないように頑張る、普通の女のコだった。
『将来の夢』なんて大層なものはない。
就職難のこのご時世、手堅く公務員にでもなっておくかな、なんて。考えるとしたらそれくらい。
そんな、平凡かつつまらない人間が、わたしだった。
不満が無い訳じゃない。って言うか、むしろ不満だらけ。
周りに合わせる程度にしか芸能界に興味がなく、かといって勉強が好きな訳でもなく。やりたいことが無い訳じゃないんだけど、なんか、漠然とモヤモヤと、雲みたいに掴み所がなくて、わたし自身上手く言葉に出来ないんだからそれを他人に伝えられる訳もなく。結局、敷かれているレールの上を、黙々と歩いている。そんな気分だ。
そんな、ありふれた女子中学生であるわたしが、彼――賢木 啓(サカキ アキラ)君に出逢ったのは、ある夏の日。通い慣れた、図書館だった。
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