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僕は今日も筆を手に取る。
僕は今日も筆を持つ。
僕は今日も筆を構える。
僕は今日も筆を握る。
僕は今日も筆を絵の具に浸す。
僕は今日も筆で描く。
祖国は銃を持てと雄弁に語るから。
祖国が銃を撃つのは国のためだと語るから。
だから僕は今日もキャンバスを睨み付けて体温で暖かくなった筆でキャンバスに鮮やかな色を付ける。
それは駄目なことだと祖国は言って、僕を非国民だと罵って絵を火にくべるから、僕は今日も筆を手に取って、僕は今日も筆を持って、僕は今日も筆を構えて、僕は今日も筆を握って、僕は今日も筆を絵の具に浸して、僕は今日も筆で描く。
僕の暖かくて軽い筆からは冷たくて熱い鉛玉が吐き出されない代わりに、暖かで柔らかな色がたくさん溢れ出す。
祖国が僕の絵を禁止したけど。
祖国が男も女も戦場へ行けと言ったけど。
祖国の言い付けに背いて僕は新しい筆を取る。
祖国の言い付けに背いて僕は絵の具を手に入れる。
祖国の言い付けに背いて僕は筆の手入れをする。
祖国の言い付けに背いて何も考えずに絵を描いたんだ。
それは悪いことだと祖国は言ったけど。
それは悪いことだと大人は言ったけど。
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