92人が本棚に入れています
本棚に追加
ソファーに座っていた人物が、こちらに気づいて立ち上がる。
白いブラウスの襟に結ばれた紫のリボンがふわりと揺れた。
金に近い茶色の髪に青みがかった灰色の瞳は猫のようにくるりと動くアーモンド形で、通った鼻梁と柔らかそうなピンク色の唇が絶妙の配置で顔の中に納まっている。
向けられた笑顔は朝露にほころぶ花のように可憐で、見惚れた。
「おはようございます。サージャです。」
少しハスキーな中音域の甘い声がそう名乗って、進み出た上司に握手を求めた。
「おはようございます、王子。今回、警護の任にあたりますスタッフを連れて参りました。」
軽く手を握り腰を折った上司が緊張した面持ちで告げる。
「王宮からあまり出たことが無くて……、ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いしますね。」
小さく首を傾げて恥ずかしそうに答えた王子。
まるでお伽噺の中からそっくりそのまま抜け出してきたような気品と神秘的な美貌。
サージャ王子はこれまで出会ったどの国の代表よりも優雅で美しかった。
最初のコメントを投稿しよう!