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街で偶然見かけたから何も考えずに声を掛けていた。
少しも変わらないその笑顔が、私の心を真っ赤に染め上げる。
「戻って来てたんですね、こっちに」
「あぁ。ちょっと用事でな」
浴衣姿の女の子達が笑いながら通り過ぎる。
無意識に目で追う私にあなたは
「行くか?」
突然の誘い。
深い意味なんてない、ただ其処に居たのが私だっただけで。
たまたまその日が花火大会だっただけで。
あなたはあの人を想いながら夜空を見上げるの
分かってはいるけど
それでも……そばに居たかった
手を繋ぐ恋人同士の後ろを歩く私達は、寄り添うことなく微妙な距離で。
はぐれるなよ、なんてあなたは言うのに
この手を掴んではくれない。
「沖縄、どうですか?」
「子供達と楽しくやってるさ。お前は?どうなんだ、最近」
「相変わらずです」
相変わらずのこの恋。
優しいあなたも相変わらずで。
私に見せたことのない顔で言うから、真っ赤に膨らんだ心が破裂した。
「あいつにも見せてやりてぇな」
その優しさは私にじゃなくて。
今でもあなたの胸に残るあの人へ。
「詩織にも居るんだろう、一緒に花火見たい相手が」
笑うあなたの顔は優しくて。
何も言えない私は頷いた。
「俺なんかと一緒で悪かったな」
「これが最初で最後ですよ、桐生さんと花火見るのなんて」
「来年は、お前が好きな奴と来れるように祈っててやる」
交わらない想い
幸せと辛さが混同するあなたの隣に居ながら
見えない涙がぽたぽたと落ちる
「ありがとう」なんて言えないから
闇に消える花火に願うの
その笑顔がずっとずっと消えませんように
どうかあなたが幸せでありますように
金魚花火/大塚 愛
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