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…………がくり。
そんな不幸な偶然のせいで僕も巻菜さんも死んじゃったのか。
怒る気力も起きない。
巻菜さんも何か脱力した感じに見える。
「え~と。
これから僕らはどうなるんです?」
と、取り敢えず尋ねてみた。
「…………意外だな。
こいつのこと、怒らないのか?」
「ええまあ。
僕が死んだのはあくまでバス事故のせいですし。
この人の不注意のせいだとか言われても、何かピンとこないですよね。」
……それに。
今更何を言ったところで、僕が生き返れる訳もないし。
「私も別に怒る気は無いですよ?
…………ああけど。
すみません、ちょっと来て下さい。」
と、男の人を手招きする巻菜さん。
男の人がつられてのこのこやって来ると。
「そう言えば、私たちを騙して天国に連れて行こうとしましたね!」
と、まるで名探偵が犯人を指名する時みたいビシッと。
男の人の両の目を、チョキの形にした右手で潰した。
ズブリと、本来聞こえないはずの効果音が聞こえて来そうな感じに容赦なく。
「目が、目がぁ~!」
と、男の人は両目を手で抑えて転がり回るのだった。
僕と上司のお姉さんは、若干引き気味になっていたが。
「ふう。
ま、これで許します。」
と、清々しい顔で言う巻菜さん。
「さ、さて雅人の質問に答えるか。
まず言っておくが、君らが生き返る事は出来ない。」
ズドーン!
そんな効果音が聞こえる感じで、僕と巻菜さんは地面に手をついで落ち込んだ。
ふふ、分かってはいたさ、もう生き返れないだろーなーって。
けどさ!
何か訳の分からんご都合主義的な神様パワーで、生き返れるかなぐらいは考えちゃうよ。
人間だもの。
ヤバい、めっちゃ鬱だ。
巻菜さんの方を見ると、虚ろな目で地面に体操座りしていた。
「うふふ、やっぱりもう二三回位は潰しておきましょうかね~」
と、呟いていたのは聞かなかった事にしよう。
僕の目までヒリヒリしてくる。
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