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めちゃくちゃ落ち込んでいる僕たち二人を見て、慌てたように上司のお姉さんが訂正する。
「とは言え、まだ寿命を使い切ってないから天国にも行けないし、地獄には行く理由はない。
君たちの魂には現世以外に行く場所は無い。」
「………………………………?」
何が言いたいんだ?
生き返れないと言ったり現世に行くしかないと言ったり。
「もっと分かりやすく言ってくださいよぉ♪」
と、巻菜さんが馴れ馴れしく肩をつつこうとしたが。
「ひっ!」
と反射的に悲鳴を上げて、目を覆って距離を取ってしまった。
…………さっきの目潰しがトラウマになっちゃっているな。
あれは、僕の目もヒリヒリするような容赦ない目潰しだったし。
僕と巻菜さんの視線に当てられて冷静を取り戻し、少し頬を赤らめながら上司のお姉さんは次のように説明した。
“折口雅人の死”と“芹沢巻菜の死”は既に事象として確定されている。
だから、“折口雅人”“芹沢巻菜”として生き返ることは出来ない。
だけど、僕たち二人の魂は与えられた寿命を使い切っていないから来世に行くことさえも出来ない。
「そこでだ。
君らには“仮初”の生を送ってもらう。」
偽物の体、偽物の名前で、別の人生を生きてもらう、と彼女は至極事務的に言った。
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