Prologue ver.巻菜

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目が覚めた。 やたら辺りは暗くて、咄嗟に枕元の目覚ましを見ると、まだ五時だった。 ありえない。 遅刻常習犯のこの私が。 この前なんか、珍しくマトモな時間帯に学校に着いたら、先生が気がつかずに「芹沢……は今日も遅刻か。」と言ったこの私が? いえ、別にそこにプライドは無いのですけどね? と言い訳がましい口調で瞼をこする。 ……………寒い。 またベットに戻りたくなるが、そうすれば次に起きるのは八時過ぎなのは確実。 今日は私が行きたい大学の推薦入試の日。 「すみませーん、寝坊しました。」 と言っても、大学の人は担任の先生みたいに笑って許してはくれないだろう。 眠たい頭を振り振り、私は洗面所に向かって顔を洗い、髪を整えた。 歯を磨きながら、二階から一階に降りると母親はもう起きて朝ごはんの準備をしていた。 ………………母親にまで、「あら巻菜、今日は珍しく早いのね。」とイヤミを言われた。 朝ごはんを食べてから、私は制服に着替えて軽く化粧をして、ダッフルコートを着て七時に家を出た。 面接試験は十時からだが、その大学は遠い。 大学に入ったら一人暮らしをしよう。 「あら巻菜、アナタ家事なんて出来るの?」と母親には言われたが。 失礼な、私も料理くらい出来ますよ、とは言えなかった。 嘘になるし。 そんな事を考えながらバスの中でぼーっとしていると、肩に誰かがぶつかった。
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