第三章 戸惑い

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神谷は咄嗟に物陰に身を隠した。 コツコツコツコツ 足音は直ぐ近くまで来ている。 足音は目の前に横たわる神谷の前で止まった。 薄暗い中で神谷は目の前の状況を理解しようと目を凝らした。 どうやら近づいて来た人物は、長身で細身の男だと思われる。 男は、目の前に横たわっている神谷を確認している。 男は携帯電話を取り出し、電話をかけだした。 ブルブルブル 突然神谷の携帯が振動した。 (何でだ!?さっきまで圏外だったのに!?) ブルブルブル 神谷は男に気付かれないように身を丸めている。 その時、神谷に視線が向けられているのがわかった。 (みっ見つかった。) 『なに隠れている。私だ。早く出てこい遠山。』 その声は何と女性の声だった。 神谷が男と思っていたのは実は女だったのだ。 『早く出てこい。そこに居るのはわかっているんだ。遠山!!』 女の声はあらあらしくなった。 しかし、目の前の女は人違いをしているようだ。 神谷は、この状況で見つかれば、自分も殺されると確信している。 コツコツコツコツ 『何をしている!?』 女は神谷の居る方へ歩き出した。 コツコツコツコツ (駄目だ!!捕まる!!) その時、神谷は咄嗟に女に突進した。 ガシッ 『何を遊んでいる!?よくやった!!帰るぞ、遠山』 !? (どういうことだ!?何故姿を見ているのに間違える!?) 神谷は不思議に感じた。 (それにしても、何故あの女は倒れなかったんだ?) 『早くしろ!!』 女の怒号が建物中に鳴り響く。 神谷は、逃げるタイミングを窺いながら、シブシブ女の後をついていく。 しばらく歩くと女の目の前にドアが現れた。 ガチャ 女が扉を開けた。 月明かりが部屋中に注がれた。 (今だ!!) 神谷は、駆け出した。 ドアをすり抜け女の横にさしかかった。 (逃げられる。) 神谷はそう確信した。 ガシッ 神谷の右腕を女が捕まえた。 (その程度の力じゃ逃げられる。) しかし、神谷はその場所から動く事が出来なかった。 (何でだ!?) 『何をしてる!?時間がない。急ぐぞ。』 女はそう言うと、神谷の腕を掴んだまま歩き出した。 目の前に女の車らしき物が現れた。 (あれに乗れば殺される!!) 神谷は、再び逃走を試みるが、あっけなくその気持ちは打ち砕かれた。 何故なら、目の前の車に写し出された姿は、女が二人立っているだけだったからだ。 第三章 完
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