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 目を覚ますと、天井が見えた。部屋が明るくなっている。ローブの彼女が、ランタンを持ってきたらしい。 「目覚めましたね」  彼女は言うと、私の手を取った。 「大丈夫です。私も同じですから」  彼女は不意に、顔を覆っていたベールをめくり上げた。  そこにあったのは、酷く焼け爛れ、目蓋と唇を失った顔だった。眼と耳が無事なのが不思議な程の傷だ。  私は、息を呑んだ。目を反らすことは出来なかった。これは、私がやったのだ。彼女は私が焼き払った国の生き残りなのだ。目を反らすことなど、出来るはずがない。  視界が狭まるようだった。私の罪の一片が目の前で形を成している。  ふと、彼女は不恰好に表情を歪ませた。微笑んだつもりなのかもしれなかったが、それは余りに無様で、無惨で、私を責め立てた。 「……あのブリュンヒルドは、竜殺しのシグルズと共に自らの城で焼け死んだと聞きました。でも、私はあの魔女がそんな死に方をしたなんて、信じてません」  彼女はようやくベールを下ろした。私はそれでようやく息をつくことが出来た。 「だって、出来過ぎじゃないですか。幾万人を焼き払った張本人が、自分も炎に包まれるなんて。だから私、信じてないんです」  彼女は私の左腕の包帯を解いていった。  突然、私の手を持つ力が強まった。 「聞いたことがありますか? 魔女ブリュンヒルドが生きていて、竜殺しのシグルズと旅をしているっていう噂。私、それを聞いて、救われる思いでした。私にも、あの焔の魔女に一矢報いることが出来るかもしれないんだ、って」  私の左腕の包帯は、全て解かれてしまった。静かで冷たい空気が、私の左腕を撫でていた。 「……綺麗な手」  彼女は陶然として私の腕を撫でさすっていた。 「白くて、艶やかで、明るいところで見たらきっと大理石みたいなんでしょうね」  不意に、彼女の手が私の頭の包帯を引きちぎった。私は自分の髪が散り広がるのを感じた。  彼女は私の上に馬乗りになった。払い除ける力など、今更あるはずもなかった。  彼女は私の髪を掴んで引き起こすと、ランタンを私の顔に目一杯近付けた。ベールの奥の目が血走っているのが見える気がした。 「貴女の瞳と髪、黒いのね」
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