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俺達は野営地を後にした。
そして直ぐに、ブリュンヒルドは再び眠ってしまった。
彼女はよく眠る。半年前からそうだったが、このところ余計にひどくなっている。もう、起きている時間の方が短い。
どうしたものか。おそらくビフレストを閉ざしてしまったことと関係があるのだろうが、俺にはどうすることも出来ない。叶うのならば同じ時を生きたいのだが。
そんなことを思いながら歩いていく内に、俺は奇妙なものを見つけた。
煙だ。それも、一筋や二筋ではない。
まだ日は低い。朝飯には遅いが、昼飯には早過ぎる。何より、ノーアトゥーンは森の都。建物のほとんどが木材で組まれているために、火には敏感だったはず。許可無く火を焚いて小火を出した者が、問答無用で追放されたとも聞く。
煙の下は、そんな街だ。厄介なことになっていないはずがない。
自然とため息が漏れた。何にせよ始末をつけられないことはないだろうが、俺のような身分の人間は目立たないにこしたことはない。
いっそノーアトゥーンを避けようか?
一瞬、それは妙案に思えたが、駄目だ。ノーアトゥーンは大樹海の中にある、唯一の宿場町なのだ。大樹海を通るまともな道は、全てノーアトゥーンに続いている。元来た街に戻るわけにもいかない以上、避けるわけにはいかないのだ。
俺は二度目のため息をついた。どこかに彼女と静かに暮らせる土地は無いものか。人影の無い秘境ならば可だろうか? だが、それは彼女が望まないだろう。
行くしかないのだ。森の都、大樹海街道の結節点ノーアトゥーンへ。俺が着くまでに灰になっていなければ、まあ、どうにかなるだろう。
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