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純は執事である前に俺の唯一の友人でもある。
俺がこの会社の次期社長だとかそんなの抜きに接してくれる奴だ。
俺が中学の頃、父が連れて来た。
と、言うよりは親に見放され捨てられて居た純を父が拾って来た、と言った方が正しいか。
何故捨てられていた純をあの父が拾ったから解らない。
きっと、ただの気紛れか利益になると踏んだか。
どちらにせよ、ろくな考えなんてないだろう。
家に来たばかりの純は一切笑わなかった。
幼いなりに頭もよく器用で要領もいい、俺から言わせれば可愛げのない子供だった。
三十年前、父が始めた会社が成功し、俺が中学になる頃には既に世界の財閥だなんて言われてるくらいの大金持ちになっていた。
初めて家に来た時、純はこの大豪邸を見て「つまんねえ場所」と言った。
俺は笑いを堪えるのに必死だった覚えがある。
この大豪邸は父が母を捨ててまで手にした、言わば宝物。
父の人生の全てでもある。
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