『プロローグ』

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バックドラフトとは…。 火災の現場で起きる爆発現象である。 室内など密閉された空間で火災が生じ不完全燃焼によって火の勢いが衰え、可燃性の一酸化炭素ガスが溜まった状態の時に窓やドアを開くなどして、熱された一酸化炭素に急速に酸素が取り込まれると結びつき、二酸化炭素への化学反応式が急激に進み爆発を引き起こすというものである。 たちまち火の海となる「フラッシュオーバー」とは違う現象である。 原理的には「水素爆発」と似たものである。 吹き飛ばされた少年は、扉の下敷きになり 運よく炎から扉が体を守ってくれた。 しかし、激しく頭を打ったせいか… 意識が遠退いてゆく。 そして、少年は再び意識を失った。 再度の爆発は観衆を二倍に増やし、周りの住民はざわめいて、それをじっと傍観していた。 平穏な街中で起きた凄まじい火災は、 住民達にその恐ろしさを正に目に焼き付けさせた。 興味津々で眺める者、写真を撮りふざけている者。心配そうに立ち尽くす近所の人達。 「危険です!!離れて下さい!!」 集まる観衆を食い止める警察官達。 防護服を着た消防士達は、消火作業の準備に懸命に取り組んでいる。 「こんなの、見たことねぇ…」 舞い上がる炎を見上げる一人の消防士。 数多くの火災に携わり、長年の経験や知識は一人の消防士を現在の指揮官にまで育て上げたが、 目の前に写るこの火災の規模を見上げながら男は呟いた。 準備を整えた、消防士達は隊長の合図と共に渦巻く炎の中へと突入を開始する。 刹那…激しい轟音は夜の町に鳴り響き、三度爆発は巻き起こり、静寂な夜を破壊する。
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