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「え~急な話しで、
何人かは既に知ってると思うが…草薙が家庭の事情の為に、今日で転校する事になった…」
朝のホームルーム、ざわつく教室。
先月まで通っていた学校。
「うそっ…私知らなかった…」
「えっ!?やっぱ…マジなの?」
「オイ!お前ら~煩いぞ!!…」
教壇に立つ僕をクラスの一部は喜びや、皮肉顔、
一部は奇異の眼差し、その異物を見る様な冷酷な視線は、まるで人の皮を被った悪魔の如く醜悪で醜い。
(…)
「荒川西町…荒川西町、御降りのお客様は御荷物のお忘れに、御注意下さい」
車内アナウンスから聞こえた、駅名と路線図を見ては目的地である、桂木町へは…もう少し時間が掛かりそうであった。
(眠いな…何だか、疲れた…)
急な引越しで、朝から動きっ放しだった為に、
草薙は疲れから眠気に苛まれる。
徐々に瞼が重たくなり、数回の瞬きを繰り返し、
ゆっくりと意識が遠退いて行く。
やがて完全に意識は無くなり…視界はブラックアウトになった瞬間、脳内にスパークが走り、ざらつくテレビを見るかのようにフラッシュバックが起きる。
キィ-ン…プンッ。
暗闇の中でテレビを点けるような感覚に似ているのか?朧げに写る視界はゆっくりと鮮明さを増す。
そこは、夜風が吹くどこかの屋上。
屋上から見渡せるどこかの街明かりに、
暗い闇夜の中にフェンス越しに佇む、学生服を着た一人の少女。
今にもそこから飛び降りそうな少女。
顔はハッキリとは見えない。
赤茶げた綺麗な髪の毛は肩まで伸び、スラッとした足は暗闇の中でも一際目立つ。
少女の片腕には、月詠弥学園全生徒が付ける学年別腕章の赤い腕章が付けられている。
恐らく学校の生徒だろうか?
「君は、誰だ?…」
草薙は少女に話かけるが、少女の耳にその声は届かなかった。
少女はその場から動こうとはしない。
「…も…聞き…な…い」
少女は一人語とのように囁く。
その言葉は誰に向けた訳でもなく、ハッキリとは聞き取れなかった。
「おいッ…」
少女はゆっくりと動き、こちらに背を向け振り返り際に、少女は少し泣いてるように見えた。
…キィ-ン…プンッ。
そして視界は歪み始め…ノイズが走るように、そこで映像は途切れ、真っ暗にフェードアウトして、何も見えなくなってしまった。
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