3人が本棚に入れています
本棚に追加
東の空はもうすっかり明るみ、メイン通りも多くの人で賑わっていた。
結局、ほとんど眠れなかったシフォンはなんとも重い朝を迎えてしまった。
今は顔を洗い終え、着替えをしている最中である。
「はあ……」
自室の鏡の前に立つシフォンの口から、いかにも憂鬱そうなため息がもれた。
鏡に映る顔の目の下には、若干のくまが見てとれる。
やはり疲れが溜まっているのだろう。
着替えを終え、傍にあった椅子に座り、前方のテーブルに上半身を突っ伏したシフォン。
その体にはローブが纏われている。
地面に裾が付きそうなほどに丈が長く、袖口が大きく緩んだ着心地の良さそうな服だ。
上から下まで漆黒に染まり、背面には魔方陣の金刺繍が施されている。
また、髪色もローブと同じように黒く、瞳の色も一切雑じり気のない黒色である。
漆黒の髪と瞳。そして魔方陣の金刺繍が施された漆黒のローブ。
それはシフォンが紛れもなく大国トゥールの名門貴族、オルティウス家の血を引く証であった。
最初のコメントを投稿しよう!