新しい世界

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    「古代史についてちょっとね」 本を閉じ、眼鏡を外しながらエレンが答えた。 「……こんな朝早くから仕事熱心ですね」 少しの驚きの後、シフォンが感心した表情でいう。 「ありがとう」 緑色の目を細めて、微笑みを浮かべるエレン。 エレンは考古学の仕事に就き、その道で知らない者はいないほどの第一人者である。 今読んでいた本も仕事に関する研究書なのだろう。 「それより、やっぱりちょっと緊張してるみたいね」 エレンの切り返しにシフォンの肩がぎくりとはねる。 「あはは…」 と苦笑いでごまかそうとするが、心の中の緊張は拭えない。 「大丈夫よ、きっと上手くいくわ」   「……そうですね」 母親の励ましを受けて少しだけ、シフォンの表情が明るくなる。  
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