眠れない夜に

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    東の空が赤と紫のコントラストに彩られ、今日もまた古き夜が終わり新しい朝が訪れようとしていた。   現在の時刻は5時半。   多くの人はまだ眠りの中にあり、夢の住人と化している時間である。   それは此処、地界で最も富み、栄え、巨大な国である"トゥール"も例外ではなく、昼間には世界最大の賑わいを見せるという、国の中央を走るメイン通りにも、今は少数の人がちらほらと見えるのみであった。   至って平和な、穏やかな風景である。   ──しかし。   この国に一人だけ──いや、一人だけと言い切れる訳ではないが。   少なくとも一人。そんな平和な空気と相まみえず、心中を荒波のように乱す者がいた。  
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