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学園を卒業したのが二ヶ月前の三月の事。
そして明日こそ、シフォンが初めてギルドへ出社する日であり初勤務を行う日なのだ。
緊張して眠れない。
眠れずの原因を明白にしてしまえば、何とも単純な理由であった。
しかし当の本人からして見れば相当なプレッシャーを感じるほどに重大な事なのだろう。
今もなお苦しそうに唸りを上げ、寝返りを打つ彼の額を流れる汗がそれをありありと物語っている。
いくら天才といえども、心の平静までもを常にコントロールする事は出来ない。
──ところで。
彼が不眠と格闘しているその横には、サッカーボールほどの黒い何者かが体を丸めスースーと寝息を立て眠っていた。
魔導師のかけがえのない友でありパートナーでもある使い魔と呼ばれる存在である。
時に身辺のお世話や修行の友、戦場の相方として一時たりとも主から離れる事はない義理堅きパートナー。
学園に入園した魔導師が例外なく行う使い魔の儀式、シフォンも1年の時にそれを終え、彼の者を召喚していたのだった。
と、そう説明している間にも夜は明けてゆく。
残り時間をわずかとし、少年はようやく浅い眠りへと落ちてゆくのだった……。
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