魔法少女の追った夢

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「お向かいの朝倉さん家の娘さんいるじゃない? ほらちっちゃい頃あんたと良く遊んでた」  夕暮れ時の食卓に母の声が流れた。言われて俺は小さい頃の記憶をやわらと思い出す。  朝倉、朝倉香織(あさくらかおり)か、確か中学の中頃までは良く一緒に遊んでたっけ。卒業してからは互いに別の高校に通う事になったから疎遠になっていたけど……。どれだけ背伸びしても俺に届かないくらいチビな、女の子だったな。  一度に過去の記憶を思いだし、今では確かではないぼんやりとした眼鏡の少女の像を夕食の立ち並ぶ皿の上に思い描くと、それらの記憶を一度閉いこんで、俺は母を見返した。 「ああ、いたなそんな奴。んで、朝倉がどうしたって?」  聞いて、俺は後悔する事になった。尋ねると、母はなぜだか少し、嬉しそうな、いやいや、年の割に子供っぽい悪戯な笑みを浮かべて。 「さっきそこで会ったんだけどね、香織ちゃん、就職したみたいなのよー」  はあ、聞かなければ良かった。この後に続きそうな言葉は幾らでも思いつくが、半ば惰性気味に聞いてみる事にした。 「それで?」 「あんたも早く就職なさい」 「ご馳走さまでした」  かなり真面目な視線の母から視線を外し素早く食器を片して二階へ上がる。後ろから母の声が聞こえた気がしたがわざと無視してやった。
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