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たく、朝倉の奴、余計な事を母さんに吹き込みやがって……。
部屋に着きベッドに頭から倒れ込む。静かに天井を見上げた。木目調の簡素な仕上げが嫌でも目に入る。
別に俺はニート予備軍でも無ければ本隊でも無い。一応バイトはしているし、就職先は今……探している所だ。決して何もしていない訳ではないのだ。
幾重にも重なった年輪の数を数えながら次第に思いは昔の頃へと遡って行く。
本当に昔は良く遊んだよな。何して遊んでたっけ?
思い出し、堪え切れずに少しだけ含み笑いを洩らした。
ああ、思い出した。確か魔法少女ごっこ、だったな。しかも中学校で。魔法少女、か。本当に好きだったよなあいつ……。文集で『将来の夢は魔法少女!』だなんて堂々と書いていた時は驚いたけど。まさか今もって事は、さすがに無いだろうけど。
物思いに耽っていると時計の針が八時四十分時を回っている事に気が付いた。
やべっ! 今週のジャンプまだ買って無えよ。近くの書店は普通よりも一日早く雑誌を発売しているのだが閉店時間は九時十五分。
俺は急いで身支度を整え外に飛び出し、車のキーロックを外す。扉を乱暴に開け乗り込もうとした、所で。
「ありゃ? おーカケルっちや! 久しぶりやんなー」
まさかこんな早くに会う事になるとはな・・・・・・そういや向かいに住んでたんだっけな。
振り向くと、そこには眼鏡からコンタクトへと変わっていたものの、幼い頃の面影を所々に残した朝倉香織がこちらに向かい、にこやかに手を振っている姿があった。
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