絶望、そして――

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「オイコラ木偶の坊。俺を差し置いてお楽しみたぁいい度胸じゃねえか」 ――振り下ろされた、はずだった。 「GAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!」 化け物の悲鳴が上がる。 目を開けた私の視界に飛び込んできたのは、一人の男の背中。 えんじ色のコートをはためかせ、まるで私を化け物から守るように立つ姿は――陳腐な言い方だけれど、まるで騎士<ナイト>様のようだった。 「代わりと言っちゃなんだが…特別でかいのをお見舞いしてやる」 そう男が告げた刹那、右手の銃が赤く光った。 男は口元を獰猛に歪ませ―― 「テメェの居場所はここじゃねえ。さっさとお家に帰りやがれ!!!」 鮮やかな光が辺り一面を包む。 やがて光が消え去った後、先程までいた化け物の姿は跡形も無く消え去っていた。 「よぉ小娘」 男が振り向く。 このモノクロの世界で唯一強い輝きを放つ翡翠色の瞳が私を射抜いた。 銀色の、男性にしては長めの髪が風になびく。 その頬には、ⅩⅢの刻印。 「お前、俺のものになれ」 カチリ、と音がした。 幻聴のようなそれは、歯車の噛み合う音。 この日、私は一人の男と出会った。 絶望すら生温い世界に射す、一筋の希望<ひかり>に。 「おい小娘。……聞いてるのかこの貧乳」 「―――だ・れ・がっ!!!貧乳だーーーー!!!!」 ――物語は動きはじめた。 この先がどこに続くのか――それはまだ分からない。 けどどうやら、ゴルゴタの丘まではまだ……距離があるらしい。
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