16.動揺

23/45
11198人が本棚に入れています
本棚に追加
/508ページ
ボブが机に出したもの―――それは二枚の紙だった。 「これは………記事?」 一つは小さい切り抜きの新聞記事。もう一つはカラーで写されている写真の記事だった。 「夕方の悲劇………5歳の少年が妹を庇い事故………」 小さな切り抜きのタイトルにはそう書かれていた。そして、その記事を読み進めて行くと………。 「………事故にあった少年は瀧川 耿介……!!?」 そこには耿介様の名前があった。その後には沙祐美ちゃんの名前も。 「なるほど………。それでこれは……?」 もう一枚ボブが持ってきた写真の記事に目を移す。 小さな切り抜きとは反対にある程度大きさのある記事だった。どうやら新聞の写真投稿欄の優秀作品らしい。 「カサクヲゴランクダサイ」 ボブがそう言って指を指した。 「…………っ!!?」 「ドウデショウカ?」 ボブは少し心配そうな顔でわたくしを覗き込んだ。 「えぇ……ボブ…やはりあなたは素晴らしいですわ。誇りに思います」 口元に笑みを浮かべそう告げる。 「モッタイナイオコトバデス」 ボブも安心したように笑みを浮かべた。 さて………基盤となるものは揃った。あとは………。 「マイケル。携帯電話を」 「ハイ」 すぐに手のひらに携帯が乗った。 「ありがとう」 「イエ」 そうやり取りした後わたくしは携帯のカメラを起動させた。 ―――――――――――――――――― ―――耿介side 「あら……今日は和道さんと一ノ瀬さんが休みなのね」 そう言うふみちゃんを横目にオレは肩を叩かれた。 「どうしたんだよ。祥吾」 「どうしたもこうしたもねぇだろ。お前朱音ちゃんと喧嘩したんだってか?」 眉をひそめて聞いてくる祥吾にオレは口を開いた。 「あぁ……お前が寝ている時にな。奈々さんに聞いたのか?」 「………まぁな。でもどうしたってんだよ。急にそんな……喧嘩だなんてよ」 信じられないと言った風に聞いてくる祥吾。まぁ…そうだよな……。 「分からない。オレにも分からないんだ。だから、今日朱音の家に行って話をつけてくる」 机に放り出されたシャーペンを握りしめ言う。少し軋んだが壊れる事はないだろう。
/508ページ

最初のコメントを投稿しよう!