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「……」
私は言葉を無くし、その場に崩れた。
涙が溢れ止まらない…。
「…姫…王国を出ましょう」
私は、その言葉に首を振る。
「母様…と…父様は?」
誰も答えない…その事が私の心を、いっそう深く傷つけた。
信じたくはなかった…でも受け入れなければならない悲しみが胸を締め付け深くえぐる。
私には、もう家族はいないのだと…大好きだった母様の優しく温かな胸に抱かれて眠る事は二度と訪れない。
父様の強く大きな腕に抱き上げられる事も優しく髪を撫でられる事も…ない。
私の胸に憎しみと憎悪のどす黒いモノが込み上げた。
「…ゆる…さない…」
私は、その日を境に奴への復讐を誓った。
奴を倒す為なら如何なる手段も選ばない…たとえ、この身が朽ち果てようと血ヘドを吐こうとも奴を殺す為だけに生きよう…復讐の鬼となるのだ。
「…姫…」
私は、ゆっくり立ち上がる。
「そなた達に頼みがあります」
私は凛とした力強い声で精一杯の気持ちを、ぶっけた。
「私に奴を倒す力を…私を父様や母様に恥じないような誰もが認める強い剣士に鍛え上げてほしい」
そこにいた誰ももが私の言葉に驚いていた。
しかし誰も、そんな私を笑う者はいなかった。
むしろ彼らは私の言葉に…。
「…本気…なのですね」
「ならば…力を貸しましょう」
「我等はトリシアが誇る最強の龍騎士団!姫の願いは我等の願い!我等は如何なる時も姫を守り姫の為に戦う事を再びこの場にて誓おうではないか!」
彼らは腰に刀を天高く翳し刃物が触れ合い音を響かせた。
「ありがとう…皆さん」
こうして…私の長く果てしない旅は幕を開けたのだった。
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