プロローグ

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 初夏の爽やかな風が吹く5月、僕の気分はどん底に近かった。何故なら目の前にある職業体験選択用紙――僕の学校では3年になると進学組以外は6月から約半年(職業によって期間が異なるのだが)の間職業体験がある。因みにこの選択によっては生涯の仕事になる場合があったりする。――が未だに白紙なのだ。 「んんんんん……!!」  唸りながらがりがりと頭をかきむしる。ついうっかり変な選択肢を選んだら大変な事になるから真剣だ。嗚呼、これなら面倒くさがらずに進学にしとけば良かった!!なんて考えても後の祭り。ふと気分転換に教室を見渡すと僕以外にも何人か頭を悩ませているのが解る。もう既に用紙を提出し、帰宅している人も何人かいるみたいだ。僕は溜め息をつきもう一度にっくき用紙に目を向けた。  選択肢は伝統的な職業からタレントまで幅広く用意されている。学校側曰く、若いときには悩みなさい。だそうだ、ふざけるな、こっちは良い迷惑だよ全く。
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