プロローグ

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 ――がらり、と音を立てて教室の扉が開き誰かが入ってきた。ぺたりぺたりと独特な足音なので、恐らく担任の久米島先生――先生は四十代半ばで、マッチ棒みたいに細長く髪には白髪がちらほらと生えている。因みに男の先生だ。――だろう。僕は視線を用紙から先生に変える、先生は気だるそうな雰囲気を纏わせ「みんな手を止めて」そう言うと残っている人達は先生の方を見る。  教室の窓からは夕方の日差しが降り注いでいて、外のグラウンドからはクラブの掛け声やらが聞こえる。そんな中僕達は教室で職業体験の選択。早く帰りたい。  先生は生徒の手が止まるのを確認し、話をし始めた。 「一応最終下校の6時までに出してくれたら良いんだが、もしそれでも決まらないなら先生が勝手に決めるからなー」  顔が渋面になるのが解る。そりゃあ誰だって自分の将来の仕事になるかも知れない大事な選択を他人になんかに任せたくない。でも、このまま最終下校まで決まらなければ確実に先生が決める。僕は唯一の逃げ道かも知れないその他に丸を付けた。
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