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――瞼越しに感じる日差しが眩しくて、ぎゅう、と目を瞑る。ごろりと寝返りをうって、仰向けの少女はゆるりと目を開く。飛び込んできたのは見慣れた天井。温い布団のにもぐりこみ、薄ぼんやりと靄がかった中で、少女は考える。
さっきの夢は、一体なんだったのだろう。
見覚えのない景色、でも見覚えのある、懐かしい場所……
まあいいか、気のせい気のせい、と呑気な少女はむくりと起き上がる。大きく背伸びをして、ふらふらと立ち上がる。まだ寝ぼけてるのかな、と一人ごちながら障子を開けた。全開にした障子戸から差し込む光に目が眩む。
光に慣れたころにゆっくりと目を開くと、緑萌ゆる、神社をぐるりと囲む鎮守の森が、まだとけきっていない雪が残る庭の上に視線をずらすと、青く澄んだ空に小さな影が舞っていた――春告精(リリーホワイト)だろうか、蕾が少し、膨らんだような気がした。もうすっかり春だ。……いや、まだ冬の気配は色濃く残っているが、それでも確実に春はその姿を現している。
桃が咲くのもすぐかしら、と少女は一人呟いた。
ばさばさと布団を畳みしまいこむ。桐の箪笥に手を伸ばし、パリッと糊を利かせた装束を取り出す。身支度を済ませて少女は鏡台の前にぺたんと座った。
鏡台の上のリボンはそのままに、引き出しから櫛を取ろうとして、
「……あれ?」
櫛がなかった。おかしいな、と思いつつ引き出しの奥へと手を伸ばす。白粉、紅、油取り紙、等々…を放り出し、さらに奥へと手を伸ばす。と、櫛に触れた。
ほっ、と胸を撫で下ろす。
お気に入りの櫛だった。
櫛を取り出そうとした手が、何か別のものに触れた。布のようなもの。それも一緒に取り出してみる。
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