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それは、手のひらに収まる程度の小さな包み。薄汚れた布に巻かれたそれは、とんと見覚えがないものだった。包みを解くと、一房の稲穂と、小さな鏡が入っていた。 綺麗な、鏡だった。多少年代を感じさせるほど古く薄汚れていたが、それでもそんな印象を少女に与えた。布で軽くこすってみると、意外なほどに汚れはすぐに取れた。幽かに、青白い霊力のようなものが感じられる。 「うーん、なんだろ、これ」 とりあえず元の布に包んで、同じ場所に仕舞い込んだ。いけない、いけない。今はこんなことをしている場合じゃなかった。 櫛でささっと髪を整えて、大きなリボンをきゅっ、と結ぶ。廊下を駆け、縁側で朝早くから酒盛りをしていた鬼に拳骨を食らわせて、台所へと向かう。昨日の残りで朝食を済ませて、本殿へと向かった。 荘厳な本殿に足を踏み入れると、もうとうに慣れたはずなのに、今でも背筋が伸びて緊張してしまう。いるのかいないのかも分からぬ博麗の大神に祝詞をあげて、少女は外へと飛び出した。箒を片手に携えて。 巫女の朝は、忙しいのだ。
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