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……木。 空を指し、天を目指し、高く聳える、旧い太い、杉の森。 あちら、こちらに好き放題、その枝を伸ばしたかに思えるそれらは、然し見上げれば覗く空を覆い隠すことなく、柔らかに差し込む光を大地まで導いている。 その中、長く伸びた草が両側に生い茂る道を、一人の少女が歩いていた。 博麗、霊夢。少女の名だ。緑の黒髪を大きな髪飾りで結わえ、紅と白の巫女装束に身を包んだ、年齢にしては大人びた印象を受ける少女は、白い息を吐きながら、その道を辿っていた。 博麗神社――その北、丑寅の方角に当たる――に、見慣れぬ獣道があるのに、少女は気づいた。好奇心から、それを辿った。やるべきこと、境内の箒掃きを放って。 そして今、大きな大きな、鳥居の前に、彼女はいた。 美しい、丹塗りであっただろう、古びた大鳥居。 博麗のものでは、なかった。鳥居に掲げられた額は、月光の影となって伺うことが出来ない。幻想郷には、これだけの大きな鳥居を持ち得る神社は霊夢の知る限りふたつとなかった。どこぞの神社が建てたやもしれなかったが、それにしては旧すぎた。仮にそうだとしても、ここまで旧いものとなる前に、霊夢の耳に入らないほうがおかしい。 ともすれば、幻想郷ではない、異界に迷い込んだか。 ――どうやらあそこは入り口で、「こちら」と「あちら」を隔てる境界だったらしい。
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