3人が本棚に入れています
本棚に追加
不意に響いた、鈴の音に。霊夢は、耳を傾けた。
澄みきった、鈴の音。
その音に誘われるかのように、本殿の裏に、足を運んだ。
細い道が、伸びていた。迷わずに、其れを辿る。霊夢の第六感は、その道の先、鈴の音の主は居ると告げていた。
鳥居のトンネルを、苔むした石段を登り、朽ちかけた大鳥居の先、果たして何者かが佇んでいた。
凛と響く、鈴の声音。
月を仰いだそれは、ゆるりとこちらを振り返る。神職だろうか、狩衣装束を身に纏った白皙の青年、無造作に切られた月の光の短髪が、風に揺らめく。
表情は窺い知れない。ちらりと覗く星の――金色の瞳が印象に残る。
「……珍しいな、こんな辺鄙なところに人が訪れるとは」
月のような、柔らかな微笑を青年は浮かべた。
霊夢とは身の丈がひとつも、ふたつも違った。青年は歩みを進め、霊夢の前まで来るとかがみ込む。視線の高さを合わせて、青年は問う。
「この地に何用か?巫(かんなぎ)よ」
「……迷い込んでしまったの」
「そうか」と青年は微笑んだ。「じゃあ、帰り道を教えてあげるから、疾く帰りなさい」
最初のコメントを投稿しよう!