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霊夢が大事そうに懐にしまいこむのを確認してから、さて、と青年は立ち上がる。 鳥居を指して、青年は言った。 「すわ、行け。此処に居過ぎると、戻れなくなる」 霊夢はそれに従って歩みを進めた。二歩、三歩と歩いたところではた、と歩みを止め、くるりと振り返る。 「ねえ、あなたの名前は?私は――」 「気軽に真名を教えるべきではない」 霊夢の言葉を遮って、にこ、と青年は笑った。 「人との絆に名など不要。大切なのはつながり――『縁』だ。縁が結び付けたなら、簡単には離れない。良くも悪くも」 名を大事に、と青年は言った。 ……さもないと、と青年は悲しそうに続けたが、それは小さな霊夢の耳には届かない。 そら、と背中を押されて霊夢は再び歩き出す。一歩、二歩と歩みを重ね、数間はたっぷり離れたところで、振り返って大きく手を振った。 今では大分小さくなった青年の白い影もまた、大きく手を振っていた。 そして霊夢は駆け出した。いくつもの鳥居を、潜った。石畳の階段も、下った。息を切らして、霊夢は立ち止まる。目の前には、あの古めいた、煌びやかな本殿があった。
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