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もう一度、霊夢は振り返る。そこにはあの青年の下へと続く石畳の階段があるはずだった―しかし、それがあるはずのそこには、何もない。あるのは見慣れた、博麗神社の広い広い鎮守の森。
獣道さえ、そこにはなかった。
……先の出来事は夢か、幻か。
いくら見回しても、どこにも道も、なにもない。ふよふよと宙に浮き、見渡しても、お社どころか見慣れた鳥居以外はなにも見えない。まるで狐につままれたような気持ちだった。
――これを彼奴が知ったら、涙を浮かべて笑うんだろうなあ……「狐に化かされるなんて」とかなんとか……
はあ、と大きなため息をついて、霊夢は地に降り立った。
ゆめまぼろしかと思われる出来事を、霊夢はゆっくりと思い返す。
人の手がほとんど入ってない、深い深い森、信仰の深さが窺える、荘厳なる神殿。
――そして記憶に甦る、月の光の髪と、星の鏡のその瞳――
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