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そして、霊夢は思い立ったように懐を探る。突っ込んだ手に、ひやりと冷たいものが触れた。
引っ張り出すと、それは手のひらよりはすこし大きい、青銅の鏡。
――夢じゃ、なかった!
小さな霊夢の心は、妖精の如く舞い上がった。満面の笑みで、その鏡をぎゅうと握る。
そして霊夢は夜空に浮かぶ満月に、その小さな満月をかざした――
***
小さな、新たな『友』を見送るのに、その小さな背中が見えなくなるまで青年は手を振り続けた。少女の気配が完全に途絶えてから、ふう、と息をつく。
久方振りに、人間と言葉を交わした。絆を育む世界と切り離され、訪れるものの途絶えたこの地に現れるのは最早あの隙間妖怪くらいしかいなかった。
自然と、笑みが零れる。
こつ、こつ、と石畳を下り、古びた賽銭箱に腰を下ろす。霞んで見えない鳥居の先に、先の少女の笑顔を幻視した。
「次もまた、逢えればいいが……然し彼女は此処へ、至るだろうか」
そんなことを考えるうち、何時しか青年は、深い眠りについていた……
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