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「そこにいる馬鹿はまだ状況がわかっていないようなので説明するが。冬木くんとゴキブリを連れてきたのは理由がある」
「おい、済ました顔してるけどお前悪口言われてるぞ」
「何言ってるの鏡助? 僕なわけないじゃない。ていうかゴキブリなら目の前にいるよ。赤い触覚を二本生やした年季の入ったゴキブリがさぁ」
あはは、と笑いながら鏡助の背中をポンポン叩く。ほんと鏡助はおもしろいなぁ。
鏡助は「お、おう」と戸惑いがちに返事をして、僕の頭をなぜか撫でてきた。
「何してんのさ」
「いや、お前の度胸は大したもんだと思ってな」
「……? ありがと?」
赤いゴキブリは何か我慢した様子でピクピクしていたけど、耐え切ったようにふんすと鼻 から息を吐いた。
「が、ガキの世迷い言にいちいち反応してやるほど私は暇じゃないんだ」
「そうだよね。もう後先短いんだし」
「わ、私は17歳だ! 一体何度言えば分かるんだ?」
「ねぇ、鏡助ー。僕、上のベッドがいい」
「えー? ったく仕方ねぇな。わーったよ」
「よかった。僕の上で鏡助が毎晩オナニーしてるとか思うと寝れないからさ」
「しねぇよ! あ、いやでもたまには……」
「死ねよクソが」
「そういうのやめて! 謝るからやめて!」
「お前ら私の話を聞けぇえええ!」
突然、赤いゴキブリが咆哮をあげた。さすがだ。もう痴呆の領域にまで踏み込んでる。
「こんな屈辱を受けたのは初めてだ……!」
「鏡助、絶対にオナニーしちゃだめだからね。 もし見つけたら引っこ抜くから」
「そ、そろそろやめよう。な?お姉さんスゲー怒ってるみたいだし」
チラリと赤いゴキブリを一瞥する。活火山の如く燃えたぎっていた。
そろそろ話を聞いてあげようかな。耳が腐りそうになるけど。
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