僕の日常

4/10
前へ
/10ページ
次へ
「あいがと」  ろれつの回っていない口調でお礼を述べ、どろだらけの両手を僕の前につきだした。 「ん、待っててってこと?」  女の子はコクリと頷き、赤いバケツをその場に置いて水道まで走った。  そして真剣な顔つきで手を洗い、また僕のところへ戻ってくる。無論タオルを渡してあげた。 「んー」  手を拭いた女の子は物欲しげな瞳で両手をあげる。 「えーっと、抱っこ?」  深く頷いて肯定。俺もすぐさま抱き抱えるとキャッキャッ、と笑い、僕の首にしがみついてきた。  あーやっぱりロ……女の子はいいなぁ。純粋だし、可愛いし、姉ちゃんみたいに胸に余分な脂肪もついてないし。  本当に、春休みの間ずっとここで張っててよかったよ。最近の子どもは怪我あんまりしないからなぁ。僕もご無沙汰だったよ。  感慨に耽っていると、 「ごぉーかく」  女の子が呟いた。  なんのこと? と聞く前に周りの異常に気がつく。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加