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「あいがと」
ろれつの回っていない口調でお礼を述べ、どろだらけの両手を僕の前につきだした。
「ん、待っててってこと?」
女の子はコクリと頷き、赤いバケツをその場に置いて水道まで走った。
そして真剣な顔つきで手を洗い、また僕のところへ戻ってくる。無論タオルを渡してあげた。
「んー」
手を拭いた女の子は物欲しげな瞳で両手をあげる。
「えーっと、抱っこ?」
深く頷いて肯定。俺もすぐさま抱き抱えるとキャッキャッ、と笑い、僕の首にしがみついてきた。
あーやっぱりロ……女の子はいいなぁ。純粋だし、可愛いし、姉ちゃんみたいに胸に余分な脂肪もついてないし。
本当に、春休みの間ずっとここで張っててよかったよ。最近の子どもは怪我あんまりしないからなぁ。僕もご無沙汰だったよ。
感慨に耽っていると、
「ごぉーかく」
女の子が呟いた。
なんのこと? と聞く前に周りの異常に気がつく。
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