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「――あっちに逃げたぞ!!」
「――追えーーー!!」
ガシャガシャと薄黒い甲冑をこすり合わせて音を出しながら、それを身にまとった男たちが走り回っていた。
タッタッタッタタタ…
「ハァハァハァ…」
炎が見える廊下を、2人の美しい男女が走っていた。
大きな洋館の、長い廊下。
窓の外も、中も照明ではない火が辺りを照らしている。
ドカンと大きな音をたてながら鉄の塊が飛んでくると、近くにあった壁がガクンと大きな音を立てて崩れ落ちた。
「――っ!!!」
ガラガラと崩れる壁を見ながら、少女が小さく息を呑む。
一瞬震えた少女の白くて細い肩を青年はそっと抱きしめて、先を急ぐよう促す。
古びた鋼の扉の前で立ち止まり、青年はその扉を押し開けて部屋の中へと足早に入って行った。
ズシンと重い扉を閉めて部屋を見回すと奥まで歩いて行き、二人は大きな壷が飾ってある棚の前で立ち止まった。
青年は不安そうな少女に微笑みを送りながら、目の前の壷を少しずらした。
ゴゴゴゴ…
壷をずらすと同時に、乗っていた棚の下がゆっくりと開いた。
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