125人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな青年の手を小さく振り払い、少女は言う。
「なぜ?兄さま!!!
2人で逃げて、この子を一緒に育てましょう?」
見ると、少女のお腹は少し膨れ上がっている。
そんな少女のお腹を愛おしそうに見つめながら、青年は言う。
「僕も…この子が元気に走りまわる姿を見たかった。」
「では、兄さまも一緒に―――」
少女がそう言ったとき、扉をドンドンと叩く音が聞こえた。
「ダメだ。もう敵がそこまできている。」
息を潜めながら青年が言った。
「僕は君が入った後、扉をしめて此処を守らなければ行けない。
分かるね?シャラ?
君が、その子を守るんだよ?」
ゆらりと微笑みながら、その透き通るような青年の青い瞳が名残惜しそうに少女を捉える。
ついで、手をそっと少女のお腹にあて、小さくキスをした。
「生まれてくるマリア。そして、可愛い僕のシャラ。
君たちのことは、これらからもずっと愛している。」
吸い込まれるように、2人の唇が重なった。
祈りをこめて青年は唇を離すと、
「どうか無事に逃げ切ってくれ!」
そう言った後、そっと少女を押して扉を閉めた。
『-星の雫-』 ~ホシノナミダ~
最初のコメントを投稿しよう!