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そんな事など気にしない様子で、床に押し倒す。 「んん!?」 紫姫は抵抗するものの、びくともしない。 (誰か…) 助けは来ないだろうと諦めていた。 その時、視界から礼が消えた。 「ったく。お前はそんなに襲われるのが好きなのか?」 溜め息交じりで紫姫にむけられる台詞。 「優…?」 覗き込んでいる顔には見覚えがあった。 「お前らも何やってんだ」 優は双子を見る。 冷ややかな視線。 (こんな優…見た事ない) いつもは優しい彼。 安心出来る笑顔はない。 あるのは、怒り。 冷めきった瞳は双子を映す。 「ただで済むと思ってないよな?」 優は静かに微笑む。 「優」 「ん?」 「その…ありがとね」 「別に」 優は紫姫から視線を外す。 真っ赤に染まった頬を隠すためだ。 しかし、耳まで赤くなっている事には気付いていない。 (昔と変わらないな…照れ屋な所は) クスッと笑う。 「…なんだよ」 「別に?」 和やかな空気は一瞬にして終わる。 「紫姫!!」 「きゃ…!?む、睦月?」 ガラッと勢いよく扉が開く。 そして、睦月は紫姫に抱き付く。 背中に、睦月の温もりがある。 それだけで安心出来てしまう。 それだけ睦月という存在に毒されているのだ。 「…」 しかし、快く思ってない者が二人いた。
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