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「ッ!?」
床に勢いよく倒れる。
「痛…」
ゆっくりと痛みに耐えながら上半身を起き上がらせ、壁に背中をつける。
誰かいるのだろうか。
暗くて誰なのか分からない。
「誰…?」
目の前には急に人の気配を感じる。
目の前に居るであろう誰かに声をかけると、向こうから近付いて来る。
「…」
誰かが猫がすり寄るように少女に倒れ込んできた。
「…ッ、睦月…?」
なんとなく、そう思ったのだ。
「…」
すると、少女の肩に手が回され、壊れ物を触っているかのように優しく抱き締められた。
「紫姫…」
よく知ってる声。
「…!!」
紫姫は息を飲んだ。
よく知っている睦月の声だ。
「あの害虫から逃げてたら、…まさか紫姫に会えるとはね」
「にげ…て…た?」
睦月の台詞に紫姫は驚く。
胸騒ぎがする。
とても、嫌な予感がする。
「うん。だってカレ、『紫姫はお前よりも他に大切な奴がいる』とか言うんだもん…思わずカレに『紫姫の変化に気付かない君に何が分かるのかな』って言ったら」
一旦、喋るのを止めると、クスリと笑う。
そして、続ける。
「カレ、『紫姫に何かしたのか!?』ってしつこいから…『紫姫は僕が好きなんだよ。だって僕が好きなのは紫姫だから…』って言ったんだ。そしたら、凄く醜い感情を含んだ瞳で追いかけて
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