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「いや、信じます。それは、ちょうど今頃の季節……夏の夕方だったと思うけど?」
「えっ? なに? ウソ! それって、あなただったの?」
誠司は頷いた。
瞬間、いずみは息を呑んだ。
「だって……だって十五年も前のことなのよ。あたしは、たまたま届け物で、あそこへ行っただけだから、あの場所へは、その後、行ってないのよ? その、たった一回の………ちょっと待って。『これ、あげます。どうぞ』って、あなた言ってみて」
「えっ?」
「言ってみて!」
誠司は一呼吸を置いて告げた。
「これ、あげます。どうぞ」
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