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ポロシャツの胸ポケットから白いハンカチを取り出し、顔から吹き出す汗を懸命に拭っている岡田さんを尻目に、私は思った。
本気で気になる!
こうなったからには、もう引き下がる事はできない。
「教えてください!アレって何なんですか?」
「え?いや…その…まあ、アレはアレだよ、へへ…」
岡田さんはごにょごにょと何か言いつつ、手に持ったハンカチをぐちゃりと握ったり広げたりしている。
………照れている?
「アレじゃわかりません!はっきり言ってください!さあさあ!」
知らず知らず声が大きくなる。
騒ぎを聞き付けたのか、ドアの向こうから母が声をかけてきた。
「あんた、寝言が大きいわよ!って時間大丈夫なの?今日はお休み?」
どう考えても寝言じゃないだろう。
母が少し天然ボケ気味だった事を思い出しながら、私は時計を見た。
午前7時。
嘘だろ?いつの間にこんなに時間が経っていたんだろう。岡田マジックか?恐るべし、岡田さん……。
「寝言じゃないよ!今岡田さんと話してるの!」
「岡田さん?誰それ?入るわよ!」
勢いよくドアが開き、母が入って来た。
「あんた!またこんなに部屋汚くして!脱いだ物はちゃんと洗濯機に入れなさいっていっつも言ってるでしょ!って誰この人っ!!!」
「気付くの遅いよっ!だから岡田さんだよ」
「………逢引き?」
「違うよ!」
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