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「何となく判った…けど、ここって地獄っぽくなくない?」
ユキがそう思うのも無理はない。
森のどこら辺に居るのかは判らないが、とてつもなく広大な森。
灰色の樹木は木漏れ日を浴びて銀色に輝く。
瑞々しい葉は繁り、風に揺られながら森林特有の爽やかな匂いを振り撒いている。
地獄と呼ぶには似つかわしくない、幻想的な森だ。
(地獄に見えない、何となく、ね…気楽なもんだ)
フーギーシードは心情を悟られない様に注意しながら、
「…ここは間違いなく地獄さ」
とだけ言った。
ユキは周囲を見渡し、納得出来ない様だった。
「こんなに綺麗なのに? こんな森見たこと無い。血の池とか、針の山とかは無いの?」
「ここには無いよ。けど、上の層の地獄にはある」
へー、と生返事を返すユキ。
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