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フーギーシードはその様子を遠巻きに眺めていた。
(盛り上がってるなあ…呼び掛けるのもなんかなあ。まあ、その内こっちに気付くでしょ)
フーギーシードは静かに溜め息を吐く。
(…俺、動けないんだよね…)
フーギーシードの嘆きなど露知らず、五人は雑談に花を咲かせる。
「あ! 今気付いたんだけど、皆の位置って座席のまんまだな」
「…おーほんとだー」
「座席と言えば、私の車はどうなったんでしょう…」
「そんな事気にするなってオッサン! なあミコト?」
「……あ、携帯バッテリー切れだ…」
暫くは勢いのまま雑談が続いたが、やがて下火となる。
それを見計らったようにミコトと呼ばれた少女がポツリと呟いた。
「ずっと気になってたんだけどさ…あそこになんか居るよ」
ミコトと呼ばれたが指差した先には、所在無げに立ち尽くす一人の巨人がいた。
「…こんにちは。ようこそ地獄へ」
いきなり五人に注視され、多少気後れしながらフーギーシードが言った。
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