それぞれ

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―――――――――――――― フーギーシードはあくびを噛み殺しながら、もそもそと喋る三人を見下ろしている。 「私は逃げられればよかった…だからここに来たのは後悔していません」 三人はなおも、今となっては意味の無い話を続ける。 「シホ…さんはなんで集団自殺しようと思ったんだ?」 呼び捨てしかけたが、結局さん付けで話しかけたのはカトウだ。 今までの人生が伺い知れる。きっと、今まで他人の中に自分を踏み入れる事が苦手だったのだろう。 「なんで、って訊かれても…。独りじゃ、勇気が出なくて…」 歯切れの悪い応えと共に、カトウを一瞥して俯くシホ。 その様子にしまった、という顔をするカトウ。 最早ここに来た時の様な、どこか和気あいあいな空気はどこにも無かった。 (死んだ後だってのに、面倒なんだな…) フーギーシードは空を見上げる。 日は僅かに傾き始めていた。 (そろそろかな) 「え?」 「あああ…」 眼下の二人が同時に声を上げた。 シホとヨコダだ。
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