第二変『ラヴソングを聞かせて』

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驚かなかった、と言えば、嘘になる。 おっきした。 隠す方が不自然なので、信玄は隠すのを止めた。 要するに丸出しだ。 そんな事はこの際関係無い。 重要な事ではない! 今一番の重要事項は、如何にこの女神を口説き落とすか?!だ! 妻との思い出深いこの泉に降臨した女神。 おそらく、天からの授かり物であろう! そろそろ再婚して身を固めよ!との亡妻からのメッセージに違いない!いや、きっとそうだ! だが、どうだ? 本名を名乗る訳にもいくまい。 「わしは……烈火と申す者。 どうか、姫の名をお聞かせ下さりませんか?」 「私、白絹と申すものに御座います。 故在って、天より降りて参りました。 ここは、貴方の泉ですか? 無礼が有りましたら、お許し下さい、烈火の君」 嘘こいた! 咄嗟に嘘こいた! 天から来たなんて、大嘘も良いところ! 国境に近いこの泉に、敵国の武将も来ている可能性は高くは無いが、確かに有る。 風格や、その鍛え抜かれた無駄の無い身体。 おそらく、中途半端な地位に居る武将では有るまい。 咄嗟に判断した謙信は、一芝居打ったのだ。 天女だなどと名乗っておけば、襲われる事もあるまい。 何より、この国では珍しい銀髪に蒼い瞳だ。 人間には、見えまい。 既にビビって、下半身もギンギンではない…か………? ギンギン?おっきしてる? 「あ…あああ貴方ッ! そッ、それッ!?」 「ははは…面目無いw 女神様を見ていたら、おっきしてしまいましたw」 「面目無いwじゃありません! しまって!早くしまってください!」 「然らば、鞘に納め申す」 「鞘?」 いつの間にか、謙信が逃げられない距離まで信玄が近付いていた。 逞しい腕が、細い謙信の身体を確り掴んで抱き寄せる。 「さっ!さささ鞘って!?」 「はいッ! 白絹の鞘に、我が刀身を納めたく存じます!」 「かっこつけても駄目です! 駄目なものは駄目です! 何を考えてるんですかッ!?貴方はッ!」 「そうですな、強いて言えば『まぐわい』の事などを考えて居ります。 あとは、たまに天下の『まぐわい』のことなど」 「万年発情してるだけじゃないですか! この馬鹿ぁあああッ!!」 ゴィイインッ!!と言う、鐘を硬い金属で殴った様な音が、大音響で森の中に響き渡った。 武田信玄。 享年38歳。 色に生き、色に死す! ・
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