第三変『黒家臣』

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伊達家の食堂は、さながら洋館の一室の様になっている。 対敵を考慮して小十郎が再設計し、造り直させたのだ。 大人数を収容出来る食堂と、政宗の私室は、如何なる攻撃でも破壊出来ない、一瞬のシェルターと化していた。 「政宗様! おはように御座る!」 その食堂が強固なシェルターと知らない、無邪気な客が1人。 朱を基調とした、動き易さを考慮して造られ着物。 その朱よりも、更に紅い瞳を持つ真田忍軍の長『真田幸村』。 政宗より3歳年上なのだが、その犬ッコロの様な動きは、どうしても年上には見えない。 大人しくしていれば間違いなく美少女なのに、本人がそれを全部ブチ壊しにしている。 「…幸村様、もう少し女性らしくしては如何ですか?」 「拙者が女々しくては、佐助たちに示しがつきもうさん! 政宗様、心遣いだけ有り難く頂戴致し申す!」 エレガント&ビューティーな政宗と、パワフル&ワイルドな幸村、性別が真逆なら、これほど完璧なものは無かっただろうに……。 「この後、秀吉様が来る予定になっております。 お二方とも、席にお着きになり朝食を御済ませ下さい」 既に馴れた様子で二人に朝食を促し、小十郎は政宗の横に控えた。 これが彼の定位置。 「……そう言えば幸村様、御供の方々は?」 「佐助たちなら、ソコに控えて御座る!」 「……降りても良いですか。 頭に血が…ッ」 「………が」 幸村の頭上。 天井に蝙蝠の様に張り付いた真田忍軍のエース『猿飛佐助』と『霧隠才蔵』。 小十郎と違い、これが彼らの定位置、と言うワケでは無い。 今回幸村の気紛れで、天井に張り付かされてるだけ。 いくら忍とは言え、ぶっちゃけ逆さはキツい。 「うぬぅ…情けない! 拙者も逆さになる故、ぬしらも頑張れ!」 「頑張らなくて良いから!早く降ろしてあげて下さいよ!!」 「ええ~」 「『ええ~』じゃありません!」 時、既に遅し。 言いってるウチに、二人はボトボトっと墜ちていた。 「ああ~…まだまだで御座るな二人とも」 「も…申し訳ありません…」 「………せん」 「お二方、朝食を御用意致しますので、別室にて如何ですか?」 すかさず朝食と言う名のフォローを入れる小十郎。 家臣の苦労が分かるのは、やはり家臣だけ、と言うことだろう。 ・
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