78人が本棚に入れています
本棚に追加
伊達家の食堂は、さながら洋館の一室の様になっている。
対敵を考慮して小十郎が再設計し、造り直させたのだ。
大人数を収容出来る食堂と、政宗の私室は、如何なる攻撃でも破壊出来ない、一瞬のシェルターと化していた。
「政宗様!
おはように御座る!」
その食堂が強固なシェルターと知らない、無邪気な客が1人。
朱を基調とした、動き易さを考慮して造られ着物。
その朱よりも、更に紅い瞳を持つ真田忍軍の長『真田幸村』。
政宗より3歳年上なのだが、その犬ッコロの様な動きは、どうしても年上には見えない。
大人しくしていれば間違いなく美少女なのに、本人がそれを全部ブチ壊しにしている。
「…幸村様、もう少し女性らしくしては如何ですか?」
「拙者が女々しくては、佐助たちに示しがつきもうさん!
政宗様、心遣いだけ有り難く頂戴致し申す!」
エレガント&ビューティーな政宗と、パワフル&ワイルドな幸村、性別が真逆なら、これほど完璧なものは無かっただろうに……。
「この後、秀吉様が来る予定になっております。
お二方とも、席にお着きになり朝食を御済ませ下さい」
既に馴れた様子で二人に朝食を促し、小十郎は政宗の横に控えた。
これが彼の定位置。
「……そう言えば幸村様、御供の方々は?」
「佐助たちなら、ソコに控えて御座る!」
「……降りても良いですか。
頭に血が…ッ」
「………が」
幸村の頭上。
天井に蝙蝠の様に張り付いた真田忍軍のエース『猿飛佐助』と『霧隠才蔵』。
小十郎と違い、これが彼らの定位置、と言うワケでは無い。
今回幸村の気紛れで、天井に張り付かされてるだけ。
いくら忍とは言え、ぶっちゃけ逆さはキツい。
「うぬぅ…情けない!
拙者も逆さになる故、ぬしらも頑張れ!」
「頑張らなくて良いから!早く降ろしてあげて下さいよ!!」
「ええ~」
「『ええ~』じゃありません!」
時、既に遅し。
言いってるウチに、二人はボトボトっと墜ちていた。
「ああ~…まだまだで御座るな二人とも」
「も…申し訳ありません…」
「………せん」
「お二方、朝食を御用意致しますので、別室にて如何ですか?」
すかさず朝食と言う名のフォローを入れる小十郎。
家臣の苦労が分かるのは、やはり家臣だけ、と言うことだろう。
・
最初のコメントを投稿しよう!