第一変『まえだ家の家庭の事情』

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「プリン…プリン…プリン… 誰が持ってったんだよ、オレのプリン……」 昨日の夜までは、自室の冷蔵庫に有った。 気付けば無くなっていた。 では、犯人は誰か? 慶次の部屋に、慶次に気付かれずに侵入出来る人間が、果たして存在するだろうか? この屋敷には居ない。 では、外から? 忍びの術すら体得している慶次に気付かれずに、と言うのは、やはり至難の業だ。 はっきり言って、もう検討がつかない。 「あ~あ…… 喰い損ねたな、オレのプリン」 屋敷をうろうろする内に辿り着いたのは、慶次の友『松風』の居る幕舎。 『松風』とは、慶次の愛馬である。 並みの馬なら片足で砕く程の巨馬で、慶次の相棒になる以前は『魔の馬』として近隣の諸将たちから恐れられていた。 人には決してなつかないその馬を、慶次は文字通り、口説き落としたのである。 松風の正体は、馬に擬態した妖獣。 一月以上松風の塒に通いつめ、恋慕の情にも近い情熱で松風を口説き落としたのだ。 それ以来、何でも話合える友となっていた。 無論、家老『奥村助衛門』も無二の友ではあるのだが。 「松風…プリン…なんて知るワケないか」 『知ってるぞ』 いわゆるテレパシーと言うやつだ。 任意の相手と音声無しで意志疎通出来る、便利能力。 松風は、これを使って慶次と会話していた。 「本当か?! 流石だな!松風! で?プリンは今何処だ?!」 『胃の辺りだ』 胃? 「あの…松風? 喰った?」 『明け方、おまえがな』 記憶に無い。 味も何も、全く覚えてない。 しかし、松風は友だ。 慶次に対して嘘をついた事など、一度たりとも無い。 ・
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